2017年1月7日土曜日

私の進学選択(1)

昨年(2016年)夏、私は進学選択で教養学部統合自然科学科数理自然科学コースに内定した。しかし、この決断に至るまでには様々な変遷を経なければならなかった。ここでは、私の進学選択について振り返ってみることとする。


私が東京大学理科I類へ入学したのは2015年の春である。当時は志望先のことはほとんど考えていなかったが、多くの理一生が入学当初においてそうであるように、漠然と理学部物理学科(理物)への進学を考えていた。
ところがこの志望は入学後三週間もすると捨てることとなった。大学の授業がわからなくなっていったためである。まず真っ先にわからなくなったのが熱力学で、その後線形代数、力学と続いていった。試験で高得点を取ることは素早く諦め、単位を取ることを目標に設定し、それと同時に理物もやめることにした。多くの理一生の憧れの的である理物に入るには、たいていの年で高い点数が要求される(*1)ためである。

それと同時に私が進学先へと設定したのが理学部化学科である。化学科はかつての人気学部であったが、ブラック学部との評判が立ち人気が下落していた。私は「マクロはミクロからどのように構成されているか」(*2)という問題に興味があり、理論化学からのアプローチで物性を考えることができそうな化学科はお買い得だろうと考えたのだった。
ところが、化学科への進学も最初の期末試験の頃にはやめておこうという気になってきた。化学科がブラック呼ばわりされている (*3)所以は、英語授業と週5で実験があることによる過密なカリキュラムである。1年前期(Sセメ)では一度英語授業を受けたが、これがさっぱり理解できない。その上、1年次には週15コマを履修していたが、私は授業のペースについていくことができず、これでもなかなか大変だと感じてしまった。私の持ち前の怠惰さでは過密なカリキュラムの中でやっていくことができないだろう。そう考えたことが決定的となって、私は化学科への進学をやめた。

こうなってくると問題となるのは代替となる進学先である。私は応用にはあまり興味がなかったため、工学部よりも(*4)理学部を中心に進学先を考えていくことにした。物理・化学・生物系で(*5)、どこか他に理学部の学科はないだろうか。生物学科はマクロな生物を対象としているところがどうにも違う感じだった。分子生物学や生化学はあまり好きではなかったため生物化学科も除外した。工学部の中でも基礎研究を重視している物理工学科というところは検討したが、点数が足りなさそうだと考えた。
生物情報科学科というところが残った。ある生命現象全体を情報科学の知識で包括的に扱う手法を研究する、という生物情報科学のアプローチには惹かれるところがあった。しかし物理をあまり学べなさそうである点がひっかかった。実は、このときの私の脳裏にはもう一つ別の選択肢が浮かんでいた。生物情報科学科は確かに魅力的ではあったが、その「別の選択肢」と比べたとき、私の目には「別の選択肢」の方がより魅力的に見えた。

その別の選択肢とは、京都大学理学部理学科だった。1年のSセメスター終了時、私は京都大学への仮面浪人を考えていたのであった。(続く)


(*1)しかし、結果的に言えば私が進学選択する年は例外であった。理物では志望者数が定員を下回り、事実上点数にかかわらず進学できるという事態が発生した。とはいえ、統合自然科学科は私に非常に適した学科であると考えられるため、この結果を知っていたとしても理物に進学しなかったであろう。
(*2)分子をたくさん集めると我々の目に見える物質となるが、その物性はどこから立ち現れてくるのだろうか?また、生物を分解すると様々な構成要素が出てくるが、それらの集合体から「生命らしさ」はどのようにして立ち現れてくるのだろうか? 私はこうした問題に興味がある。
(*3)理学部ガイダンスに出席した時は、化学科の人は「実際にはブラックではない」と主張していた。公平のためここに両論を併記しておく。
(*4)私の興味の対象である(*2)のような問題は、あまり工学部で扱われていないらしい。
(*5)「地球全体というシステムの行く末は、個々のミクロな要因から予言できるのだろうか?」という地球科学的な「マクロ-ミクロ」の問題にも興味があるため、その意味では地球惑星物理学科も選択肢の一つになるはずである。しかし、地球というシステムは私の肉体と比べあまりにも巨大にして複雑であり、「マクロ-ミクロ」の問題を考える第一歩としては不適当だろうということで、この人生では地球科学的問題には目をつむって生きていくことにした。

0 件のコメント: