2017年4月28日金曜日

3行レビュー: 前期教養の授業(3)

【2Sセメスター】
・月3,月4(S1): 基礎実験III(物理学)
可逆振り子で重力加速度の値を求めるなど、古典力学に関する実験が多かった印象。
得られたデータを半信半疑でプロットしていくとズバリ直線になった、といった瞬間は爽快だった。
しかし100回測定を繰り返したり手書きでプロットしたりする作業が面倒だった、とも思う。

・火2: 歴史と文化 <総合B>
古代ローマの資料の和訳を参照しつつ、ローマ法の変遷を紐解いていく授業。
ローマには憧れがあった上、どう歴史を語るかという考え方に触れられて興味深かった。
先生は暴走しがちで、良く言えば愛が伝わる授業だった。悪く言えばまとまりのない授業だった。

・火3, 金3(S1): 物性化学
この授業では、どうやら分子軌道・配位結合・結晶構造について学んだらしい。
久しぶりに教科書を出してきたが、永年方程式以外の内容を全然覚えていなかった。
当時は構造化学が全くわかっていなかったため、暗記でごり押しになって全体的にしんどかった。

・木1: 常微分方程式 <総合F>
一限なので3回くらいしか行かなかったが、多分その名の通り常微分方程式の解法を教えていたのだろう。自習としてそこそこ勉強したので単位を回収する分には問題なかったのだが、授業に行かなかったら試験範囲がわからず困ったのを覚えている。

・木2(S1): 生命科学
数理的・物理的観点から生命の特徴を捉える新しい試みの授業だが、理念先行・運用粗雑。
急造の教科書には大量の誤植があり使いにくい。更には先生もプログラミングのことがわかっていないにも関わらずRでプログラムを組む課題が出た。東大生の優秀さに甘えて無茶をいわないでくれ。

・金2: 美術論 <総合A>
中世までの西洋美術の鑑賞のポイントについて、テーマ別に解説する授業。
スライドに絵画を表示するため部屋を暗くするのだが、その結果私は授業のたび夢の国へ旅立ってしまい、やがて出席するのをやめてしまった。鑑賞レポートだけ出したら単位は来た。

・金5: 言語比較論 <総合A>
発音や文法などのテーマについて、様々な言語を取り上げ特徴を比較する授業。能格性など、マイナー言語の興味深い文法的特徴を知ることができ良い授業だった。駒場にレポート課題は数あれど、この授業の「先生が創作した言語の例文を分析して、言語現象を考察する」問題は名作。

・?: 基礎統計/ベクトル解析/解析学基礎 <全て総合F>
常微分方程式に賭けると総合Fの単位が足りなくなる恐れがあったため、保険として適当に履修登録しておいた。教員の顔も授業がある教室も把握していなかった。
試験だけ受けたところ、解析学基礎だけは単位が来た。

【2Aセメスター】
・水2: 電磁気学A(他クラス聴講)
昨年単位を落とした電磁気学A。二度目の履修はわかりやすいと評判の先生の授業を選んだ。
初めに数学的内容をまとめて学習するため見通しが良く、諸法則が数学的道具でMaxwell方程式へと洗練されていくドラマティックな展開がexcitingだった。しかし、初めからこう教わっていれば......。

・木2: アルゴリズム入門 <総合F>
Rubyのプログラミングを組み、より少ない計算量で欲しい値を計算させるための工夫を学ぶ。
主に一年生が履修する授業だが、プログラミングに関して何もわからないのはマズいと思い2Aでとった。コンピューターに無駄な計算をさせない「動的計画法」の考えが特に面白かった。

【集中講義】
・1年夏: 最先端メディカルゲノムサイエンスを体験する <主題>
RNAサイレンシングという現象をin vitroで再現し、遺伝情報の発現について実験で学ぶ授業。
溶液をピペットマンで取り、Vortexで混ぜ、遠心分離機でDNAを回収、アガロースゲル電気泳動で同定......教わった知識はもはや覚えていないが、ともかくも分子生物学者の気分は味わえた。

・1年冬: 自然科学ゼミナール(生命科学) <展開>
駒場キャンパスを歩き回って植物の葉や茎を採集し、それを薄く切って電子顕微鏡で観察し、特徴を調べた。高価な電子顕微鏡をおもちゃのごとく使って壁紙用の写真をたくさん手に入れた。電顕の使い方を説明するのにわざわざキーエンスの人を呼んでいたのはやたらに豪華だと思った。

・1年冬: 柏キャンパスサイエンスキャンプ <主題>
柏キャンパスで3泊4日の実習を行う。脂質二重膜内部でGFPを合成するin vitroのシステムを作成した。確か、GFPの作り方の情報が入ったDNAをPCRで増幅させた覚えがある。
院生が「やがて人工細胞を作りたい。そして人工彼女をも」と夢を語ってくれたのが印象的だった。

(終わり)

2017年4月26日水曜日

3行レビュー: 前期教養の授業(2)

【1Aセメスター】

・月2: 英語中級
New York Timesの記事を取り上げ、下手な英語(*)で解説する質の低い授業だった。
教材は良いので授業中に自習すれば良いのだが、いかんせん教員の発音と頻繁すぎる「えー」が耳障りである。教員がこの場に存在するのをやめてくれればもっと良い授業になるだろうに、と思った。

・月3,月4: 基礎実験I,II(化学)
理論化学、無機化学、有機化学の全体に渡って満遍なく設定された12のテーマについて実験する。
必修の構造化学や物性化学は量子力学的計算が多く化学反応はあまり扱われない。
ゆえに、必修で化学化学した授業は実はこれしかない。そういう意味では貴重な存在といえる。

・火1: イタリア語初級(演習) <総合L>
前期に引き続いてイタリア語の運用を学ぶ。
どうも履修者全員に100優を出したようだが、教務課に怒られなかったのだろうか。
先生はNHKテレビでイタリア語の講師もしていた。NHKのテキストを買ってサインしてもらった。

・火3(S1/S2): 英語一列/英語二列S(FLOW)
英語一列は前期と同様。FLOWは英語での討論と発表でスピーキングを練習する。FLOWでは、「何かモノの名前を紙に書いてください」と言われたとき、私がとっさに書いた単語が「urea(尿素)」だったため、「Which is useful, wine or urea?」という珍妙な討論をする羽目になった。

・火4: 微分積分学
前期に引き続いて、多変数関数の微積分を学んだ。
スタンダードな講義で特にコメントすることがない。
一度教員が段から落ちた時、同クラが「地面が不連続だった」と言ったのはfunnyだった。

・火5: 微分積分学演習/線型代数学演習
前期に引き続いて、一年生の数学の要点を解説してもらった。
T先生の授業でわからなかったところが整理され、単位を得る助けになった。
配布プリントは週を追うごとに分厚くなり、製作も運搬も大変そうだと思いながら受けていた。

・水1: 地域生態学 <総合D>
あまり授業に行かなかったが、試験に行ったら単位は来た。

・水2: イタリア語一列
接続法や条件法などのやや高度な文法を学び、文章の読解もした。
イタリア語の文章は音読すると大変気持ちが良かったのを覚えている。
同クラが製作したシケプリは非常に素晴らしいもので、授業内容の大変良い復習ができた。

・水3: 身体運動・健康科学実習II
卓球をした。

・水5: 微生物の科学 <総合E>
微生物を研究している農学部の様々な教員のオムニバス講義であった。
様々な微生物の様々な活用法を知ることができたのは面白かった。
試験は持ち込み可で、単位が楽に取れたあたり農学部らしいといえば農学部らしい。

・木2: 電磁気学A
教科書を開けばdivやrotが跋扈する、熱力学に並ぶ数式の森である。
私は熱力学の反省を踏まえ、教科書を着実に読み解いていきMaxwell方程式まで辿り着いた。
ところが理論を理解しても問題を解くことはできず、結局私は単位を落としてしまったのだった。

・木3: 構造化学
水素原子等の軌道を学ぶこの必修科目の実態は、学生が理解できるよう設計されていないキメラ的汚泥である。導入部は量子力学の一般論であり、天下り的な解説は私の理解を拒んだ。更に、表層に物理をまとった"化学"であるこの科目では、物理的意味を深く考えれば考えるほど泥沼にはまるのだ。

・金2: 人文科学ゼミナール(テクスト分析) <展開>
イタリア語の短編小説を題材にし、小説中の動詞の活用に注目して読み解く授業だった。
「なぜこの活用形がここで使われているのか?」を考えることで、文法をテクストの中で理解するとともに、イタリア語という言語の特性の一片を味わうことができ大変刺激的だった。

・金3: 線型代数学
この数式はどこから来たのか。この教員は何者か。この授業はどこへ行くのか。
ぐちゃぐちゃしていて読み解けない板書と解けない演習問題を前に、私はかのゴーギャンの絵を思い出した。そして東大を退学して京大へ行こうかと悩んだ。

・金5: 生物物理学 <総合E>
2人の教員が、それぞれの研究テーマであるタンパク質のフォールディング問題と粘菌の走化性について解説した。授業の一部として行われた研究室紹介を通じ、統合自然科学科で興味深い研究が行われていることを知ることができたのは大きな収穫だった。

(続く)

(*)あまりに日本語的な発音と、英語の得意そうな学生からの質問を度々聞き取ることができなかったという出来事は、英語の教員としての資質に関する疑念を私に抱かせるに十分だった。

3行レビュー: 前期教養の授業(1)

教養学部前期課程を修了した際、自分は前期教養で何を学んだのか、ALESS以外の授業についても振り返っておこうと思った。この一連の記事では、前期教養で受けた各授業について、3行でその概略と感想を述べていくこととする。
特記がないものは必修または事実上の必修である。必修以外は<総合E>などで科目区分を表した。それらは、いわゆる一般教養科目だと認識していただければ構わない。

【1Sセメスター】
・月2: 英語二列W(ALESS)
科学論文を分析しつつ、自分でも実験を行いその結果をオリジナルの論文にまとめる授業。
教員は優しく説明もわかりやすかったのだが、とにかく課題が多く学生を老化させる。
この授業で形成された夜型生活は今も尾を引いており、健康問題となっている。

・月3,水2: イタリア語一列・二列
イタリア語の文法を地道に学んでいく授業。教員の雰囲気が柔らかく親しみが持てた。
イタリア語の豊かな活用を問う毎週の小テストはやや大変だった。
"Siamo senza speranza.(私たちには希望がありません)" という教科書の例文が印象的だった。

・月4: 初年時ゼミナール理科(大陸を知る)
アメリカの地質に関する英文テキストをゼミ形式で読んでいく授業。
学生がまとめた発表に教員がたくさんツッコミを入れるという方法で進められた。
先生のツッコミは聞いてもよくわからず、ツッコミの数も多すぎてテンポが悪く大変眠かった。

・火3(S1): 英語一列
共通テキスト「教養英語読本I」の読解を行う授業。
テキストの英文は京大の入試問題のように硬く、読み応えがあって個人的には好きだった。
ただし、英文読解の授業は予習で読んで理解してしまえばおしまいなので、特に講義に用はない。

・火3(S2): 英語中級
予習では"TED talks"から一つ講演を選んで聴解し、授業ではその内容を英語で紹介する発表を行う。
発表後は討論を行うのだが、英語の得意な人が多く圧倒されがちだった。
みんな社会問題に関心があるようだったので、私は敢えてフィボナッチ数列の性質などを紹介した。

・火4(S1/S2):  数理科学基礎/微分積分学
ε-δ論法を使って1変数の微分積分をスタンダードに学んだ。
当時はよくわからなかったが、講義ノートは今見返すとすっきりとまとまっていてわかりやすい。
この先生は東大で授業を受けた数学者の中で一番変人でない、普通に近い方で、安心感があった。

・火5(S1/S2): 数理科学基礎演習/数学基礎理論演習
演習問題を解いて提出すれば単位が得られる授業。プリント資料の丁寧な解説が評判だった。
教員は単位認定の甘さで有名で、授業を聞いていた人は少なかったが、説明は相当わかりやすい。
瞑想が好きな先生で、授業の最初の5分くらいは毎回瞑想の時間とされた。

・水3: 身体運動・健康科学実習
バドミントンをした。
私のような運動音痴でもスポーツで勝負になるというのは、東京大学の利点の一つである。
「全力のx割出したつもりの握力」が実際にx割になっているかを調べるレポートが面白かった。

・木2: 熱力学
偏微分を駆使した熱力学の体系は、高校を出たばかりの私にとって数学を建材とした迷宮であった。
全微分等が数学の授業で解説され、ようやく数学に慣れてくる頃には授業が進みすぎて手遅れになっていた。全くわけがわからず不可だと思っていたが、成績はなぜか良だった。

・木3: 情報
論理回路、通信方式、情報量と圧縮方式、情報と社会など多岐にわたる内容を学んだ。
まさに教養のための科目といった内容の幅広さで、そして教養のための科目らしく授業はあまり面白くない。しかし先達のシケプリは偉大で、面白く、かつ簡潔で、かつ有用と素晴らしいものだった。

・金1: イタリア語初級(演習) <総合L>
イタリア人の先生から、イタリア語の運用について会話や作文を通じて学ぶ授業。
少人数でアットホームな雰囲気であるが、全てイタリア語で進み己の無能さを痛感する。
一方成績評価は甘く、必修イタリア語との相乗効果もあり履修してよかった授業の一つである。

・金2: 有機反応化学 <総合E>
取ったは良いが、教科書は高い上に先生はぼそぼそと話すという典型的なハズレ授業だった。
必修以外で自由に授業を選択できる貴重な枠の1つをこれで費やしてしまったことを後悔した。
一応シケタイを務め一応勉強したが結果は可。私は東大生でなく一応東大生なので仕方ない。

・金3(S1/S2): 数理科学基礎/線型代数学
駒場で最も有名な大鬼教員の一人、「陸の王者」「富山の汚点」ことT先生のワンマンライブ。
説明の理解が難しいため自習で学んでいくことになるのだが、教科書を無視しており教える順番もおかしいためいつまでたっても授業で習った内容にたどり着けない。一体どうしろというのか。

・金4: 力学A
高校では微積を使わなかったが、今度は微積を使ってニュートン力学を体系化する。
教員が初々しく、黒板への板書と口での説明が完全に分離していて大変退屈な授業だった。
教員は後に卓越研究員に指定された。教えるのは苦手でも研究は得意、ということか。

・金5: 自然現象とモデル <総合E>
演示実験とその解説を通し物性理論の考え方を学ぶ授業。
不思議な現象を間近に見ることができて面白かった一方、解説はよくわからなかった。「自然現象を一つ取り上げ、それをモデルによって説明せよ」という難しい最終レポートはトラウマである。

(続く)