2018年11月1日木曜日

日常の中のサイエンティフィック・スポーツ

概要
KTTA「キムワイプ卓球の基礎知識(2)」で述べた定義のもとでは、それまで無意識的に行われてきた日常の中の営みがサイエンティフィック・スポーツに該当し得る。そのような活動として、例えば論文スタイルエッセイ、引用的ツイート、実験器具料理などが挙げられる。本稿では、今まで光を当てられてこなかったそれらの行為について述べ、新しいサイエンティフィック・スポーツとして提案する。

本文
サイエンティフィック・スポーツという用語は、キムワイプ卓球のようなものの総称として使われてきたが、その定義は近年まで曖昧であった。サイエンティフィック・スポーツの定義が初めて明確に与えられたのは、「キムワイプ卓球の基礎知識(2)」(KTTA, 2018)においてである。その資料内で、KTTAはサイエンティフィック・スポーツを「研究内容とは関係ない科学コミュニティにおける共通作法による,本業以外の営み」として定義した。例えば、キムワイプ卓球における「共通作法」とはキムワイプであり、「本業以外の営み」とは卓球である。また、マイクロピペットダーツにおける「共通作法」はマイクロピペット、「本業以外」はダーツとなる。
これまでは、サイエンティフィックスポーツとして、キムワイプ卓球やマイクロピペットダーツのような従来のスポーツに近いものばかりが目立っていた。しかし、この定義から分かることは、「共通基盤」と「本業以外」から成るならば、必ずしも(通常の意味での)スポーツである必要はないということだ。では、この定義を使って新しいサイエンティフィック・スポーツを作り出すことはできないだろうか?
実は、「キムワイプ卓球の基礎知識(2)」では、その可能性についても触れられている。そこでは、今後登場しうるサイエンティフィック・スポーツとして、「インパクトファクター文学」「キムワイプ音楽」「学位ボウリング」「挑戦的萌芽絵画コンクール」の4つが挙げられている。しかし、これらはいずれも、意味が分からないため事実上実行不可能であるという問題点を抱えている。 従って、 新しいサイエンティフィック・スポーツを作り出す上では、単に新しい用語を与えるだけではなく、それらの用語がどのような行為を指しているのか、その内容が理解可能なものを考案しなければならないということになる。
そこで更に「キムワイプ卓球の基礎知識(2)」を読み進めると、「サイエンティフィック・スポーツによるサイエンティフィック・スポーツ」の項目にたどり着く。ここでは、五月祭で実施された「キムワイプ卓球研究会」などもサイエンティフィック・スポーツに該当するということが述べられている。なぜならば、キムワイプ卓球研究会もまた、キムワイプ卓球という「本業以外」と研究会という「共通基盤」の2つの要素から構成されているためである。これは、意味が理解可能で、かつ新しい定義によって新しく生まれたサイエンティフィック・スポーツの例にまさしく該当している。ところが、この「キムワイプ卓球研究会」は新しくサイエンティフィック・スポーツを作ろうとして生まれたサイエンティフィック・スポーツではない。実際、私は第一回及び第三回キムワイプ卓球研究会の責任者としてその運営に携わっていたのだが、研究会の最中も「自分はサイエンティフィック・スポーツをしているのだ」という認識は持っていないかった。この事実は、我々が無意識のうちにサイエンティフィック・スポーツを行っている可能性、知らず知らずのうちにサイエンティフィック・スポーツを作り出している可能性があることを示唆している。
そこで、新たなサイエンティフィック・スポーツを打ち出す上で、サイエンティフィック・スポーツの発明を試みるのではなく、発見を試みるというアプローチをとって考えてみることにした。その結果、自身の日常生活の中からいくつかのサイエンティフィック・スポーツを見出すことができた。それが、以下で述べる論文スタイルエッセイ、引用的ツイート、実験器具料理である。

(1)論文スタイルエッセイ
「fire HD 8タブレットの話」「バイトの話」のように、論文のような構成, 書き方で書かれたエッセイや日記のことを、論文スタイルエッセイと呼ぶことにする。上記の例では、特に実験の論文を意識して、概要+背景+方法+結果・考察を骨子として書かれている。 論文風エッセイは、論文スタイル(共通基盤)+エッセイ(本業以外)から構成されている。

(2)引用的ツイート
「“統合自然地理学”という本の存在は統合自然サーチ人に広く知られている (tactfully28, 2018).」というツイートのように、ツイートの後ろに "(名前, 年)"を付けてあたかも何かを引用しているかのように見せかけたツイートのことを、引用的ツイートと呼ぶことにする。引用的ツイートは、引用のフォーマット(共通基盤)+twitter(本業以外)から構成されている。

(3)実験器具料理
私はビーカー、薬さじ、駒込ピペットなどを持っているが、それらを使って味噌汁、ココア、プリンなどを作ってきた。このように、実験器具を料理に使うことを実験器具料理と呼ぶことにする。実験器具料理は、実験器具(共通基盤)+料理(本業以外)から構成されている。

私が発見したサイエンティフィック・スポーツは以上の3つである。今後も、サイエンティフィック・スポーツのコミュニティが拡大し、様々なサイエンティフィック・スポーツが発掘されていくことに期待したい。

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