2019年8月10日土曜日

義眼の怖さ

私のお気に入りの漫画の一つに、「ヴォイニッチホテル」(全3巻)がある。南の島のホテルを舞台に、ヤクザ、メイド、殺人鬼、殺し屋、少年探偵団、幽霊といったアクの強いキャラクターたちがほのぼのと過ごしていくお話だ。殺人鬼や殺し屋がいる以上、人は死ぬし部屋は血まみれになる。それなのに島の人はのんびりとしていて、ストーリーはコメディチックだ。特に毒の効いたブラックな笑いを求めている人におすすめしたい。

さて、このヴォイニッチホテルには、主人公がある登場人物に義眼をプレゼントするというシーンが出てくる。主人公の優しさが伝わる、心温まる名場面だ。
それで思ったのだが、「義眼」という言葉は、その実際のはたらきの優しさに対して語感があまりにも強くはないだろうか。義眼を作る、義眼を贈るという行為には、人に対する思いやりが感じられる。しかし名前が義眼なのである。カタカナで書けばギガンだ。RPGのゲームにギガンという魔法があったら、きっと回復の魔法ではなく炎攻撃の魔法だろう。そう思うと義眼が急に怖くなってきた。ギガン......。擬-gunだけに、急に飛び出してきてこっちを攻撃してくるのではないだろうか。しかも炎属性だ。実に恐ろしい。道行く人から燃える目玉が急に飛んできたら腰を抜かす自信がある。義シリーズには義眼の他にも義足、義手、義髪、義理チョコ、義経などがあるが、義眼がぶっちぎりで一番怖い。義肢なんて壊れかけのタンスがきしむ音みたいでいかにも弱そうだ。その点やっぱり義眼は強い。義眼は怖い。

ところで、義眼は擬-gunだといったが、擬-ガンとはすなわちがんもどきだ。以上の議論を踏まえると、熱々のがんもどきを食べると熱い汁が飛び出してきて危ないという結論が導かれる。おでんは火傷しないようよくふーふーしてから食べるべきだ。まだ夏なので油断しがちであるが、おでんはいつどこで我々の前に姿を現すか分からない。常におでんに対する警戒を怠らないようにしたいものである。

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