2021年9月22日水曜日

都会と自意識

以前、こんな漫画を描いたことがある。当時、読者の一人に次のようなことを言われた。
「面白かったよ。特に「今日はどこ行く?カラオケ?ボウリング?」というセリフ。作者の田舎者さが透けて見えるようで面白かった」
バカにされたものである。しかし、都会人の遊びが何なのかと言われると実際何も思いつかない。1000年前のことなら和歌を詠んだり雅楽の演奏をしたりするのが都会の遊びなのだろうが、現代のこととなるとさっぱり見当がつかないのだ。そんなものは教科書に書いてなかった。私は使えない部類の東大生であるため、教科書に書いていないことが分からない(*1)。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥という。都会的な面構えをした友達に会ったときに尋ねてみた。その結果、おおよそ次のような選択肢があることが分かった。
  • アパレルショップ
  • テーマパーク
  • バー
これを聞いて、私は身の毛がよだつ思いがした。私にとって、こうした場所に行くことは心霊スポットに行くことと近似的に等しい。私の想像によれば、これらは非常に恐ろしい場所なのである。
まずアパレルショップであるが、店員に話しかけられる危険性がある。入念な面接のもと店員を選んでいるためであろうが、アパレルショップの店員というのは皆身長が高く、爽やかな笑顔を持ち、ファッショナブルな格好をしてハキハキと喋りかけてくる。対峙するだけで気後れがするというものだ。彼らの発する気迫の前では、何も買わずに帰るなどできようもない。店員に話しかけられる恐怖に怯えることなく買い物できるのはユニクロくらいだ。私がユニクロ以外の衣料品店に足を踏み入れるのは母と一緒のときだけである。
ちなみに私の年齢は25歳です。どうかよろしくお願いします。
さて、テーマパークも恐ろしい場所だ。広告から読み取れる情報によれば、テーマパークは楽しげな雰囲気で満ちた場所のようだ。園内には固定された表情の着ぐるみが歩き回っており、行き届いた掃除によってゴミ一つないらしい。こうして要素を並べ立ててみると、どうも思想統制の進んだディストピアの一種ではないかという気がしてくる。私のような根暗な人間が足を踏み入れたが最後、陰気なオーラをばら撒くなと石を投げられ排斥されるのではないだろうか。最悪歩くゴミとして焼却処分される末路も有り得る。「テーマパークに来たみたいだぜ テンション上がるなぁ〜」という有名なネットミームがあるが、テーマパークに来てテンションが上がる人の気が知れない。
バーには全く行ったことがない。バーといえばいつも紫煙がくゆっているイメージがある。おそらく地球で一番紫煙がくゆっている。タバコの煙は毒ガスである。吸い込むと即座に肺ガンを発症し、三時間後にはガン細胞が全身に転移して死に至る。死を防ぐにはガンモドキを大量に食べてガン細胞よりガン細胞モドキの方を多くするしかないが、失敗して窒息死する者も多い。タバコはそのあまりの致死性の高さから、戦争で兵器として使用することが禁じられている代物だ。全盛期には、世界人口1万人あたり約274億3800万人がタバコの煙による肺ガンで死んでいたという。これによって人類は既に絶滅している(今地上にいるヒトのような外見の生物は、実は遺伝子上ヒトよりもむしろタコに近い)。当然そんなガスが充満している場所になど行けるはずがない。

これらの場所に関して、「ブログのネタとして面白そうだから行って記事書いて来てよ」といったことも言われた。とんでもない。放送事故を通り越して動物虐待である。
都会には到底近寄ることのできない場所がたくさんある。結局のところ、私にとって都会の遊びというのは庭園を見て、銭湯に入り、蕎麦を食べて、豆腐屋でおからを買って帰ることなのであった。

(*1)最近は教科書に書いてあることも分からない。

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