そうは言うものの、私は全くお酒を飲まないわけでも、お酒が嫌いなわけでもない。あくまで節制しているだけだ。私が一番好んでいる酒はビールである。あのホップの香りが好きだ。アルコール度数が低くて飲みやすいのも良い。
スーパーのビールの棚に行ってみると、発泡酒と呼ばれるお酒も隣で一緒に並べられている。値段こそビールより安いものの、買って飲んでみると味が薄くて物足りない。折角の限られた肝臓を使うなら、多少高くても発泡酒よりビールを選びたいと思ってしまう。
発泡酒の安さは酒税の安さだ。本来であれば、酒税はアルコールの度数に応じて決められるべきだろう。しかし、ビールは他の醸造酒と比べてアルコール度数の割に異様に高い酒税を課せられている。発泡酒は、この歪な税制によって生み出された。社会が「ビールのような味だがビールに分類されない酒」を求めたためだ。本来なら概念として存在しなかったはずなのに、日本社会のひずみ、人間のエゴによって生み出されてしまったミュータント。それが発泡酒なのである。もう一度スーパーの発泡酒の棚へ行ってみよう。このような声が聞こえてこないだろうか。
わたしは誰だ......?
ここはどこだ......?
この内なる苦悩を抱えた発泡酒たちに対して、誰が諭してあげることができようか。これがもう一段階進むとこうなる。
誰が生めと頼んだ!
誰が造ってくれと願った!
行き着くところはこうだ。
わたしはわたしを生んだ全てを恨む......
だからこれは
攻撃でもなく
宣戦布告でもなく
わたしを生み出したお前達への
"逆襲" だ
今でこそ彼らは大人しく陳列されているが、こうなったらもう手出しできまい。人類滅亡の危機である。もしあなたが発泡酒を好んで飲んでいるのであれば、それはミュウツーを飲んでいるのと同じことだと自覚すべきだ。手遅れの事態を回避するためにも、我々は速やかに酒税法を改正する必要があるだろう。